53・10(ゴ・サン・トー)の交渉には、まだ早かった52年の夏頃、石井課長は私に引き出しから出したメモを見せながら、「53・10の待遇改善をどうするか」と切り出した。
貨物関係の大合理化だから、それなりの見返りを用意しなければならないが、貨物関係といっても乗務員、ヤードや貨物取扱駅の操車係から構内係、配車係、貨物係に限らず保守系統など多岐にわたる職員が働いている。
そのどの職種からも手当の増額や職群の見直しや昇格数の増配などの要求が山積している。
そのすべてに応える力はないし、特定の一部だけをよくすることは、賃金体系を歪にするだけでなくデパート組合の国労としても耐えられない。
そこで石井課長の案は個別の職種を対象とする待遇改善はやらないで「長時間・深夜労働にこたえる交代制手当の新設」と「動力車乗務員基本給表の廃止」だった。
とうじ国鉄には、特殊勤務手当としての夜勤手当はあったが、民間企業にあるような交代制手当はなかったのだ。
長時間かつ深夜に及ぶ、国鉄労働そのものを評価するような手当を新設することを、国鉄再建のための大合理化の対価とする。
かつては大駅長と同じ「判任官」にもなれたという機関車乗務員が、次第に既得権を失ったことや国労の激しい運動を嫌って(労使ともに)、経済的な要求を主体にした機関車労働組合を結成したのは1951年だった。
そして当局との粘り強い交渉と国労の反対をおしきり仲裁裁定で、一般職員とは別の基本給表を作り平均300円の格差(「動乗格差」)をつけることになったのが57年6月だった。
その後、何度かのストを構えたり公労委への訴えなどを経て格差は67年には850円までに引き上げられていた。
これをそれ以上、大きくすることは他職種の不公平感も増し、当局はもとより国労鉄労ともに受け入れられない。
しかし、動労としては設立の旗印でもあり、春闘を中心にことあるごとに「動乗格差是正」要求をトップ交渉や公労委の事情聴取の場でも執拗に繰り返していた。
それは国労との共闘の躓きの石にもなっていた。
来るべき53・10で動労がここを先途と「動乗格差是正」を前面に押し立ててくることは必定であり、ただでさえ難しい交渉を瓦解させてしまうことも危惧された。
その根っこの存在理由とでもいえる動力車乗務員基本給表そのものをなくしてしまう?!
石井課長が、その癖でもぐもぐ鼻を鳴らすようにして語る言葉に我が耳を疑った。
いつまでも国労と動労が両立しているのは、国鉄再建の阻害要因にもなりかねないだろう。
いつの日にか、両組合が一本化する日を想えば基本給表を一つにしておくことが大事だ。
それは、今やるしかない。
動力車乗務員基本給表の適用を受けている職員に特別昇給(実)を与えて動力車乗務員基本給表(名)を諦めさせよう。
併せて53・10に動労(松崎)を巻き込もう。
これは大仕事だ!
明日から松崎明を説得しよう。
私は早速松崎明に連絡した。
貨物関係の大合理化だから、それなりの見返りを用意しなければならないが、貨物関係といっても乗務員、ヤードや貨物取扱駅の操車係から構内係、配車係、貨物係に限らず保守系統など多岐にわたる職員が働いている。
そのどの職種からも手当の増額や職群の見直しや昇格数の増配などの要求が山積している。
そのすべてに応える力はないし、特定の一部だけをよくすることは、賃金体系を歪にするだけでなくデパート組合の国労としても耐えられない。
そこで石井課長の案は個別の職種を対象とする待遇改善はやらないで「長時間・深夜労働にこたえる交代制手当の新設」と「動力車乗務員基本給表の廃止」だった。
とうじ国鉄には、特殊勤務手当としての夜勤手当はあったが、民間企業にあるような交代制手当はなかったのだ。
長時間かつ深夜に及ぶ、国鉄労働そのものを評価するような手当を新設することを、国鉄再建のための大合理化の対価とする。
かつては大駅長と同じ「判任官」にもなれたという機関車乗務員が、次第に既得権を失ったことや国労の激しい運動を嫌って(労使ともに)、経済的な要求を主体にした機関車労働組合を結成したのは1951年だった。
そして当局との粘り強い交渉と国労の反対をおしきり仲裁裁定で、一般職員とは別の基本給表を作り平均300円の格差(「動乗格差」)をつけることになったのが57年6月だった。
その後、何度かのストを構えたり公労委への訴えなどを経て格差は67年には850円までに引き上げられていた。
これをそれ以上、大きくすることは他職種の不公平感も増し、当局はもとより国労鉄労ともに受け入れられない。
しかし、動労としては設立の旗印でもあり、春闘を中心にことあるごとに「動乗格差是正」要求をトップ交渉や公労委の事情聴取の場でも執拗に繰り返していた。
それは国労との共闘の躓きの石にもなっていた。
来るべき53・10で動労がここを先途と「動乗格差是正」を前面に押し立ててくることは必定であり、ただでさえ難しい交渉を瓦解させてしまうことも危惧された。
その根っこの存在理由とでもいえる動力車乗務員基本給表そのものをなくしてしまう?!
石井課長が、その癖でもぐもぐ鼻を鳴らすようにして語る言葉に我が耳を疑った。
いつまでも国労と動労が両立しているのは、国鉄再建の阻害要因にもなりかねないだろう。
いつの日にか、両組合が一本化する日を想えば基本給表を一つにしておくことが大事だ。
それは、今やるしかない。
動力車乗務員基本給表の適用を受けている職員に特別昇給(実)を与えて動力車乗務員基本給表(名)を諦めさせよう。
併せて53・10に動労(松崎)を巻き込もう。
これは大仕事だ!
明日から松崎明を説得しよう。
私は早速松崎明に連絡した。
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